サウナと野球と時々カメラ

意識の低い政治学徒だった人の日記。週末サウナー。

夏の甲子園のチケット争奪戦はなぜ起こる?

 超今更ながら、お盆に甲子園に行った時に書きかけていた記事の存在を思い出したので、最後まで書き足した。

 8/13に、夏の高校野球第8日目を観戦してきた。この日は第1試合が履正社×津田学園、第2試合が星稜×立命館宇治、第3試合が智弁和歌山×明徳義塾という関西デーで、お盆期間真っ只中だったこともあり、チケットの早期完売が予想されていた。このため、我々一行も始発で甲子園に向かい、一番早くついた人がチケット購入の列に並ぶことで、チケット購入を目指すことにした。

 当日に買えるのは1・3塁特別自由席、1・3塁アルプス席、外野自由席の3択だ。2017年までは外野席が無料開放されていた。しかし、2018年の第100回大会から混雑緩和を理由に、外野席の有料化が行われることとなった。そのため、観戦しようと思ったら、チケットが売り切れる前に球場に行かなければならなくなった。
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 個人的には、この外野席のチケット制が、2つの点で観客に過酷な野球観戦を強いるようになってしまったと思っている。実際に驚いたことも含め、少し書き残しておきたい。ポイントは「再入場ができないこと」である。

一度入ると再入場できない?

 2018年から、外野席も有料化されたことは既に述べたとおりだ。アマチュアスポーツの試合をお金を払って観戦するということ自体は、さほど珍しくない。実際、2017年以前も内野席は有料だった。

 ただし、高校野球が特異なのは、チケットの半券を持っていても、再入場ができない点だ。お金を払って入場しても、一度球場から退出してしまうと、半券を持っていても入ることができないのである。筆者が知っている限り、プロ野球のセパ両リーグ、サッカーのJリーグラグビートップリーグなどのプロスポーツでは、入場後も半券を持っていれば再入場ができるようなシステムとなっている。当然、夏の高校野球でも再入場ができるものと思っていたので、入場の際にもぎりの人から「再入場はできません」と注意喚起をされた時に、耳を疑ってしまった。

 個人的には、この再入場不可というルールが、観客の行動を2つの点で拘束してしまっていると考える。

炎天下の野球観戦

 第1の拘束は、炎天下の野球観戦を強いられることである。

 お盆休みの近畿地方は暑さが過酷で、開催時期や開催地を変更することはできないか、という問題提起がなされているほどである。プレーする選手が過酷な環境にさらされているのはいうまでもないが、それを観戦する側の疲労も相当だ。

 しかし、再入場不可ルールは、観客に球場から離れ難くするインセンティブを与えてしまう。なぜなら、一度退出してしまったら、再度チケットを買わなければ入場できないからである。これによって、どういう影響が考えられるだろうか。

 例えば、酷暑の中の観戦で、水分が失われてしまい熱中症になりかけてしまったとしよう。従来のように外野席の入場が無料、もしくは前述したプロスポーツのように半券による再入場を認めていれば、万が一体調を崩してしまったとしても、一時的に球場を離れて空調の効いた近隣商業施設で体を休めることもできる。ところが、再入場不可ルールが導入されてしまったことによって、観客は少々体調を崩してしまったとしても、無理を押してまで観戦するように考えてしまうのである。一度退出してしまったら、おそらくその日はもうチケットを買うことができないだろう。遠方から来ていたりすれば、なおさら無理してしまうだろう。

 球場内ではしきりに熱中症の防止を訴えるアナウンスがなされているが、本当に熱中症を防ぐことを考えるのであれば、まずは再入場不可ルールの改正が必要ではないだろうか。

熾烈なチケット争奪戦

 2点目は、前日から夜を徹して行われるチケット争奪戦である。

 1日のチケット発売枚数が限られており*1、球場に着いたものの買えなかった、という展開も多々あるようである。こうなってくると、確実に見ようと思ったら、球場の到着時間を早めるしかない。

 実際には、途中でチケットの追加販売を行っているようではあるが、そもそも再入場できないという制約が課せられているので、観客にとっては途中退出しない方向のインセンティブが付与されている。この結果、何人が途中退出するか分からないことから、「いつ発売されるのか?」「何枚発売されるのか?」という情報が分からなくなり、「途中から甲子園に行っても入れないかもしれない」というリスクを負わなければならない。そのため、観客には「確実に観戦するために朝から並んでチケットを取る」という選好を持ってしまうのである。こうなってくると、3試合目や4試合目が見たくても、午後から球場入りしたらチケットすら買えないかもしれないので、来場時間がどんどん繰り上がってしまいかねないのである*2

どうすれば快適に観戦できるようになる?

 ここ数年の高校野球熱の高まりを見ると、高野連朝日新聞社が混雑緩和を意図して有料化を図ること自体は分からなくはない。ただ、なぜ再入場禁止という制約を課したのか、個人的に全く理解できない。それならば、座席数以上にチケットを販売し、着席保証なし、再入場ありという条件にできないだろうか。こうすれば、観客が朝から球場内にとどまるインセンティブはないので、試合ごとに観客がある程度入れ替わって座れる可能性も増えるし、早朝からチケット争奪戦で消耗することもなくなるだろう。

 現在の条件に変更されてから夏の甲子園が2回行われた。今の制度が妥当かどうかを考えるための材料は少しずつ増えているはずだ。来年はもう少し快適に高校野球を見られるようになってほしい。

*1:大会主催者の朝日新聞社高野連のウェブサイトを見ても、発売枚数に関する記述は見つけられなかった。

*2:しかも、うっかり入場してしまうと退出できないので、本当に3試合目や4試合目が見たくて朝からチケットを買う人がいたとすれば、一度スーパー銭湯などで汗を流し、梅田や三宮などで時間を潰してから戻ってくるのがいいかもしれない。